前回は日本の海と山の関係を勉強してきました。一見正反対のようにも見える山と海ですが、実は意外な関係がありました。
今回勉強するのは日本の川ですが、多くの人々が住んでいる平野や、様々な日本の地形と密接に関わりあっています。
狭い日本列島を流れる川は、世界的に見ても流れが速く、大地を侵食していきます。そして、ときには氾濫し、大きな被害を生むこともあります。しかし、山々から運ばれてきた養分を含む川の流れが氾濫することで、豊かな土壌が出来上がります。古くから、川が溢れることを利用して、日本では水田稲作が営まれてきたのです。
しかし、水田が減少し、川の周囲にまで住宅が広がり始めた今、災害や問題が生まれているのも事実です。
今回はそんな日本の川と平野、その他の地形について勉強してゆきます。人々の営みに不可欠な川と平野、社会地理で最も出題頻度が高い分野です。
日本の川の特徴
川は高いところから低いところへ流れます。つまり、山から湧いて、海に流れていくわけです。
前回、日本の山々の連なりを勉強しました。山々は列島の中央部分に平行に連なっています。川はそこから海へ流れていくわけですから、列島の連なりに対して垂直に流れます。
日本列島は東西に細長いですから、川の長さは自動的に非常に短いものになるのがわかるでしょう。最も長い川でも400㎞にも達しません。世界では1000㎞を越える川があることを考えると、日本の川は非常に短いのです。
しかも、川の流れは標高1000m級の山々から一気に下ります。ですから、日本の川は世界的にも珍しい、長さが短く、流れが急という特徴を持っているのです。

日本とフランスの主な川

わが国と諸外国の河川勾配比較
・世界の川では当たり前に行われていることが、日本ではほとんど行われていません。それは何でしょうか?
ヒント: 日本と川の特徴を考えましょう。特に川の流れです。
答え:水運(舟運)。
世界の多くの川では、大きな貨物船やフェリーなどの旅客船が行きかっています。しかし、日本の川は流れが速いため、船の運行はほとんど行われていません。特に大型船の運行はゼロと言っても過言ではありません。
・日本の川にはあるものがたくさん作られています。その数は3000基弱。それはなんでしょう?
ヒント:人間以外ではビーバーが作ります。
答え:ダム。
川の長さが短いため、降った雨はすぐに海に流れてしまいます。また、川の水が多いときと少ないときの差が激しく、安定した水の利用が難しくなっています。よって、水をいつでも利用できるようにするためには、ダムを造って水を貯めているのです。また、水を貯める以外にもダムには発電などの役割もあります。
川を特徴ごとに覚えよう

利根川流域面積1位 長さは 322㎞

信濃川流域面積1位 長さは 367㎞

石狩川流域面積1位 長さは 268㎞
川の長さ及び流域面積のランキングは超基本中の基本です。この順位だけは必ず暗記してください(それぞれの長さや流域面積を覚える必要は全くありません)。社会地理の問題に高確率で出題されます。

三大暴れ川の一つ 吉野川
暴れ川とは洪水や水害が多い河川のことです。それぞれに愛称があり、セットで覚えましょう。これもよく出題されます。

日本三大急流 球磨川
日本の川の中でも特に流れの速い急流です。冒頭でも紹介した「常願寺川」はさらに急ですが、知名度の観点から三急流には含まれていません。
しかし、受験生ならば、「常願寺川」を含めた4つを覚えておきましょう。
・紀行「おくのほそ道」作者である松尾芭蕉が訪れたのは以下のうちどこか?
ア.山形県 山寺(立石寺)
イ.静岡県 三保の松原
ウ.熊本県 阿蘇神社
ヒント: 五月雨を集めて早し〇〇〇
答え: ア
最上川は芭蕉の俳句とセットで覚えましょう。経由地は同じく山形県内にある山寺を導くことが出来ます。静岡県・熊本県はおくのほそ道の行程に含まれていません。
三大清流の定義は実際の水質と必ずしもリンクしているわけではなく、周辺環境などとセットで語られているようです。もちろん、水質が一般的な川と比べて良いことには変わりありません。
四万十川は笹山久三の同名の小説の舞台にもなっています。水量の多い時期には橋ごと水面下に沈む「沈下橋」は四万十川の典型的風景です。
柿田川はすぐに別の川と合流してしまうため、わずか1.5㎞しか距離がないことでも有名です。しかし、富士山の雪解け水や地下水が大量に湧き出しており、周辺は公園として整備されています。
長良川は木曽三川のうちの一つです。長大な河川ながら、ダムが存在しないことも水質が良い理由の一つとされています。」鵜を使ってアユなどの魚を獲る伝統的漁法「鵜飼い」が夏の風物詩です。
川が作り出す地形
基本的な川の名前を覚えたところで、平野を中心とした地形の話題に移ります。
理科の範囲でもありますが、川の流れには3つの働きがあります。それが浸食作用、運搬作用、堆積作用です。
いずれの地形も非常に重要な単語ですので、川の働きと共に覚えてください。
上流の地形
① V字谷

V字谷
流れの速い、川の上流で見られる。川の流れで「川底が浸食」された地形。
さらに運搬作用で多くの土砂が流出する。土砂の中流・下流への流出を止めるため、砂防ダムが多く設置されているが、中流・下流での河原の減少など、問題も抱えている。なお、具体的な地名は出題されない。
② 扇状地

扇状地
川が山地から平地(盆地)に抜け、流れが急に緩やかになった斜面で見られる「扇形」の地形。
上流から運ばれてきた土砂が堆積して出来、水はけが良く、地表から水の見えない「水無川」になることもある。
中流・下流の地形
① 河岸段丘・台地

河岸段丘・台地
階段状の地形。侵食力の弱い川の流れが長い時間をかけて土地を侵食して出来た階段状の地形。
段丘の表面は水が得にくい台地となる。地下水までも遠すぎ、稲作には向かず、主に畑作地として使われる。台地上は水害の危険性が少なく、土地が丈夫なため、住宅地としては最適。古くから〇〇原と名付けられた土地が多い。
② 平野

仙台平野
流れのゆるやかな中流~下流で、土砂を運ぶ力が弱まり、土砂を堆積させて出来た平らで広大な土地。
度重なる洪水によって周囲に積もってゆき、豊かな大地を作る。水を得やすい為、稲作に向いている。世界の古代文明もこのような平野から栄えた。
平野と川はセットで出題されることが非常に多い為、以下の名前は必ず覚えましょう。特に重要なものは黄色で網掛けしています。余力があれば名産もあわせて覚えてください。
平野 | 河川 | 県名 | 名産 |
石狩平野 | 石狩川 | 北海道 | 米 |
津軽平野 | 岩木川 | 青森県 | りんご |
秋田平野 | 雄物川 | 秋田県 | 米 |
仙台平野 | 北上川 | 宮城県(河口) | 米 |
庄内平野 | 最上川 | 山形県 | 米 |
関東平野 | 利根川 | 千葉県(河口) | 米(早場米) |
越後平野 | 信濃川 | 新潟県(河口) | 米 |
濃尾平野 | 長良川・揖斐川・木曽川 | 岐阜県 | |
大阪平野 | 淀川 | 大阪府(河口) | |
讃岐平野 | (香川用水) | 香川県 | |
徳島平野 | 吉野川 | 徳島県 | |
広島平野 | 太田川 | 広島県 | |
筑後平野 | 筑後川 | 福岡県・佐賀県 | 米 |
八代平野 | 球磨川 | 熊本県 | いぐさ |
③ 三角州

三角州
流れがさらに緩やかになる河口付近で見られる。土砂が堆積し、川の中に作られた土地。水はけが悪く、稲作向き。ただし、具体的な地名は出題されない。
<おまけ>河口付近で見られる人工的に作られた特徴的な地形
輪中

輪中
木曽三川(長良川・揖斐川・木曽川)の河口付近で見られる、川に周囲を囲まれた土地。
土地の一番低い部分では川底よりも低くなっている。これは堆積作用により長い年月をかけて川底が上昇。それに合わせて、堤防の高さを上げていったことにより、川より低い位置に人々が住むことになってしまった。
川の氾濫に備え、水屋と呼ばれる避難用の建物が存在する。非常用のボート、物資なども保管されている。
湖
中学入試によく出る湖も押さえておきましょう。
まとめ
都道府県と県庁所在地に次いで覚える事項の多い単元です。
こちらで紹介した川が実際にどこを流れているのか、地図帳で調べて、具体的なイメージを膨らませましょう。別に用意している暗記用プリントでは覚えるべき川や平野の名前をイラスト付きで紹介しています。こちらも併せてご利用ください。
地図帳を見て気になる地名があればどんどん書き出してみましょう。また、皆さんの住んでいる地域、出かけた先で、川が作り出すどんな地形があるか探してみてください。
河岸段丘などは、近くに川が流れていれば、しばしば見つけることが出来ます。
また、それら土地がどのように利用されているか、日々、目を配ってみてください。